最初の投稿日:2013-07-14
ずいぶん前に読んで、今も子育てについて考えるときに思い出す本がある。
アンドリュー・J・サターさんとユキコ・サターさんの『「与える」より「引き出す」! ユダヤ式「天才」教育のレシピ』だ。
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旧版の『ユダヤ人が語った親バカ教育のレシピ』を読んだ当時、私は勝手に「これは最強の教育本ではないか」と思った。絶版だと知ったときには、人生で初めて出版社へ電話して、重版の予定を尋ねたほどだ。
その後、旧版はタイトルを変え、加筆・訂正された文庫版として刊行されている。
本棚をつくるだけでは足りない
本書で紹介される考え方のなかでも、特に残ったのは「本でいっぱいの本棚を見せること」と「子どもを観察すること」だった。
本棚は大切だと思う。私自身、本からたくさんのものを得て、人生の選択肢を広げてもらった。
ただ、本を並べたら子どもが読むわけではない。「本を読め」と言い続ければ読むようになる、というものでもない。
ここは、自分の子ども時代を振り返るとよくわかる。
私は10代後半まで、文字を読むことが大嫌いだった。漫画さえほとんど読まず、本棚にあったのは教科書くらい。読書感想文も、あらすじだけを頼りに何とか書いていた。
親から「本を読め」「英語を勉強しろ」と言われるほど、かえって嫌になった。
読ませるより、興味が動く瞬間を待つ
私が本を読み始めたのは、10代後半になって、自分で興味を持てる分野が見つかってからだった。28歳のときに本気で読書をするようになり、ものの見方も仕事への向き合い方も大きく変わった。
だからこそ、子どものころに読書習慣があれば、もう少し苦労は少なかったかもしれないとも思う。
けれど、その習慣を「読め」という命令だけでつくるのは難しい。
必要なのは、本へ手を伸ばせる環境を用意しながら、何に目を止めるのか、どんなことに夢中になるのかをよく見ることなのだと思う。
興味の芽が出たときに、その先へ進める本や体験をそっと渡す。答えを先回りして与えるより、一緒に探す。
この本から受け取ったのは、そんな「引き出す」姿勢だった。
文庫版の目次
- はじめに ユダヤ人が我が家にやってきた!
- プロローグ 「ユダヤ人の生徒は、なんでいつもトップクラスなの?」
- 第1章 子供の「天才」を引き出そう!
- 「ユダヤ人伝説」は誤解がいっぱい
- アタマが一番の財産。持ち運びも簡単!
- 優秀なのは遺伝のせい? 答えは「NO」!
- ユダヤ式「引き出す」教育法=エデュカーレ
- ユダヤ式「親バカ」のススメ
- 第2章 ユダヤ人が語った「天才」教育のレシピ
- レシピに共通するテーマは「信頼」
- ユダヤ式「天才」教育、七つのレシピ
- [レシピ1]本をあげよう! 本でいっぱいの本棚を見せよう!
- [レシピ2]子供を観察しよう!
- [レシピ3]見せる、体験させる、感動させる!
- [レシピ4]子供をのびのび、優秀に育てる三つの言葉 「どう思う?」「よく思いついたね!」「いっしょに答えを探そう」
- [レシピ5]言葉と態度で「信じてるよ」を示そう!
- [レシピ6]「あなたがボス」であることを忘れずに!
- [レシピ7]時期が来たら、親離れさせよう!
- このレシピが日本でも有効なワケ
- 第3章 子供が発する危険信号と「六つの特性」
- 子供が発する10の危険信号、親が犯す10の間違い
- 頭の良い子が持つ「六つの特性」
- いつから始めて、いつ終わるのか
- 「レシピはムリ」「レシピはムダ」と思った方へ
- 第4章 「天才」教育が伝えるもの
- 五人の「天才」が受けてきた教育
- アラン・ヒーガー(ノーベル化学賞受賞者)
- アンドレア・ゴールドスミス(電子工学への女性進出のパイオニア)
- オーラ・フィッシャー(巨大弁護士事務所トップ・パートナー)
- デイヴィッド・グリーン(途上国支援NPOの活動家)
- ミルドレッド・ドレッセルハウス(米国の「至宝」物理学者)
- エピローグ 子供に、世界にひとつだけのハッピーを与えよう
- おわりに ご縁と感謝をこめて
目次だけを眺めても、子どもへ何を教えるかではなく、親がどう向き合うかを考える本だと伝わってくる。
旧版の目次
- はじめに ユダヤ人が我が家にやってきた!
- 第1章 子供の天才を、引き出そう!
- ヨーコさんの疑問「ユダヤ人の生徒は、なんでいつもトップクラス?」
- ユダヤ人伝説、ホントのところは?
- アタマが一番の財産。持ち運びも簡単!
- 優秀なのは、遺伝子のせい? 答えは「NO」!
- ユダヤ式「引き出し教育法」=エデュカーレ
- ユダヤ式親バカのススメ
- 第2章 ユダヤ人が語った親バカ教育のレシピ
- レシピのテーマは「信頼」
- ユダヤ式親バカ教育7つのレシピ
- レシピ1 本をあげよう! 本でいっぱいの本棚を見せよう
- レシピ2 とにかく観察
- レシピ3 見せる、体験させる、感動させる
- レシピ4 子供をのびのび優秀にする3つの言葉
- レシピ5 言葉と態度で「信じてるよ」を示そう
- レシピ6 「あなたがボス」を忘れずに!
- レシピ7 時期が来たら、親離れをさせよう!
- このレシピが日本でも有効なワケ
- 第3章 危険信号と6つの特性
- 子供が発する危険信号、親が発する危険信号
- 頭の良い子が持つ6つの特性
- いつから始めて、いつ終わるのか
- 「レシピはムリ、レシピはムダ」と思った方へ
- 第4章 親バカ教育が伝えるもの
- 物理学者でありながら、ノーベル化学賞受賞。異色の科学者 アラン・ヒーガー
- 電子工学分野への女性科学者進出のパイオニア アンドレア・ゴールドスミス
- 巨大弁護士事務所を支えるトップパートナー オーラ・フィッシャー
- 途上国支援NPOで「天才賞」受賞。今最も注目を集める活動家 デイヴィッド・グリーン
- 米国の「至宝」と称えられる科学者。歴代大統領からあつい信頼を受ける ミルドレッド・ドレッセルハウス
- エピローグ 世界にひとつだけのハッピーを、あなたの子供に与えよう
子どもの教育を考える前に
子育ての本を読むと、つい子どもをどう変えるかに目が向く。
でも本当に問われているのは、親がどれだけ子どもを見ているか、信じて待てるか、自分自身も学び続けているかではないだろうか。
過去の人たちが本に残してくれた知恵が、すべての家庭にそのまま当てはまるわけではない。それでも、自分たちに合うヒントを探すことはできる。
まずは親が読む。そして、押しつけずに観察する。
昔この本を読んだときに感じた熱量は、今振り返ると、その二つの大切さに向いていたのだと思う。
AIネイティブの子どもたちと「考える力」
2026年8月23日 追記
これから、子どもの教育は大きく変わると思う。
AIに聞くことは、本を一冊読むよりずっと簡単だ。知りたいことを入力すれば、短く整理された答えがすぐに返ってくる。便利だからこそ、ついAIに頼ってしまう。
文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」では、1か月に本を「読まない」と答えた人が62.6%だった。AIが生活へ深く入れば、本を読む人はさらに減っていくのではないかと感じている。
もちろん、AIを使うこと自体が悪いわけではない。これからは、AIへ何を、どう質問するかが重要になる。
ただ、その質問する力さえ鍛えられなくなるのではないか、という不安もある。
本を読むと、すぐには答えが出ない。途中でわからない言葉に出会い、前のページへ戻り、自分なりに考える。著者の意見に違和感を持つこともある。その遠回りのなかで、何を疑い、何を知りたいのかが少しずつ形になる。
一方でAIが、答えだけでなく、質問の仕方や考える順番、さらには進路や生き方まで提案してくれるようになったら、人はどこまで自分で選ぶだろう。
アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に描かれた、システムが人の適性を判定し、職業まで決めていく社会を思い出す。AIが示した「あなたにはこれが向いています」という提案に、そのまま従ってしまう。AIネイティブとして育つ子どもたちは、そんな感覚を当たり前のものとして受け入れるようになるのかもしれない。
これは未来の予言ではなく、今の私が感じている不安だ。
だから、AIの使い方だけを教えるのでは足りない。長い文章を読み、すぐに答えが出ない時間を過ごし、AIの答えを疑い、別の問いへ言い換え、最後は自分で選ぶ。その力も一緒に育てる必要がある。
AIが身近になるほど、子どもを観察し、興味を引き出すという、この本の考え方はむしろ重要になるのではないだろうか。
この記事は人間による下書きからAIのサポートを経て、最後に人間がチェックして投稿しております。

